君んちの匂い。

本当の君んちは入ったことない、家の前まで。

あの部屋の匂いは、うちの駅の車掌室と同じ匂い。

君を抱きしめて、
思いっきり息を吸う
困った顔をして
今はもう、
と君が言う。

その続きは言わないで、と
最後のわがままを瞼の裏に告げたら

息を吐いて、
色づいた声の

色を消していこう。

文字だけで、思い出は充分。

後は、僕の名前を熱く呼ぶ

その吐息が最後まで残るのだろうな

忘れてたってね

君の声帯知ってるから

僕を呼ぶ声だけは、いつまでも再生できてしまうからさ。